鹿児島市西千石町の「フレッセ厚生市場」にある靴修理・鞄修理・合鍵作製のお店です。
 

店 名   リペアショップ鹿児島店
住 所   鹿児島県鹿児島市西千石町13-11
電 話   099-223-1766 
店舗URL http://ebisusama2322.on.omisenomikata.jp/


トントンという音

テーマ:ブログ
リペアショップ鹿児島店の坂元です。


今回は、医師、鎌田實氏の心に響く言葉より…「トントンという音」です。


生きるって大変なこと。

これまで、たくさんの生と死に関わって生きてきました。

73歳のおじいちゃんの話をしましょう。


徐々に痩せてきました。

背中が張ると言って、外来にやってきました。

血液の検査や超音波検査、CTの検査をしました。

後腹膜に腫瘍が見つかりました。

すい臓がん。

リンパ腺にも転移がありました。


ご本人と優しい奥さんと、何度も治療法について話し合いをしました。

東京の息子さんも話し合いに参加しました。

おじいちゃん自身は、

「もういいな。手術はしたくない。抗がん剤が少しでも期待できるなら、苦しくない範囲で1回試してもいい」

これがおじいちゃんの自己決定でした。

自分の行く道を自分で決めたのです。

奥さんも息子さんも賛成しました。

僕自身がこの人の立場だったら、僕もこの選択をしたかなと思いながら、

「全力で支えさせていただきます」

と何度もの話し合いをまとめました。


ご本人の希望で緩和ケア病棟に入院しました。

「やるだけのことはやった。もういいな。とにかく苦しいのは嫌だな」

緩和ケアが始まりました。

痛みが取れると、彼は再びニコニコし始めました。

それでもご飯は食べられません。

「匂いを嗅いだだけで食べられなくなる」


「でもね先生、もう1回ご飯が食べたいな」

横についている奥さんが黙ってうなずきました。

「先生、1回外出させてください。気分を変えてあげたい」

根拠はないけどいいことだと思いました。

賛成、賛成と背中を押しました。

おじいちゃんもニコッと笑顔を見せました。


翌日、息子さんは東京の会社を休み、飛んできてくれました。

お昼から半日、家に帰りました。

夕方7時頃、おじいちゃんが病室に戻ってきました。

病室へ伺うと、おじいちゃんはニコニコしていました。


「先生、トントンがよかった」

「トントンって何ですか?」

「家に戻って、いつも自分が座るところに座って、夕陽が落ちるのを見ていました。

先生、夕陽がきれいでね。

目を奪われていたんです。

この庭も見納めかなと思っていました。

その時です。

お勝手からトントンという音が聞こえだしたんです。

女房のまな板の音です。

こんな音、何十年も聞き続けていたはずなのに、一度も意識したことがありませんでした。

女房もきっと意識していないんです」


奥さんが言葉を受け取った。

「何も意識していません。でも、この人が家に帰ってきてくれて、私はうれしくて、無意識の中で心が躍っていたんです」

おじいちゃんが続けた。

「まな板のトントンという音を聞きながら、生きてきてよかったと思ったんです。

シューッとご飯ができあがる音も聞こえてきました。

匂いも伝わってきたんです。

食べ物が運ばれてきても、その匂いだけで吐き気が出てたべたくなかったのに、音も匂いも心地がいいのです。

先生、食べれたよ。

お茶碗に3分の1ぐらいだけど、うまかった。

もう思い残すことはありません」


奥さんと息子さんが下を向いて泣き出しました。

このおじいちゃんは間違いなく生きている。

死は近づいているかもしれない。

けど、そんなことはどうでもいいんだ。

いま生きているという実感が大事。


『1%の力』河出書房新社




富山県の砺波市という町に、ガンで亡くなった井村和清さんという方がいた。

彼は医師だった。

右膝に巣くった悪性腫瘍の転移を防ぐため、右脚を切断したが、その甲斐もなく、腫瘍は両肺に転移してしまった。

そして、昭和54年1月に亡くなったが、その時の遺書がある。


「ただ、ようやくパパと言えるようになった娘と、 まだお腹にいるふたり目の子供のことを思うとき、 胸が砕けそうになります。

這ってでももう一度と思うのです。 しかし、これは私の力では、どうすることもできない。

肺への転移を知った時に覚悟はしていたものの、 私の背中は一瞬凍りました。

その転移巣はひとつやふたつではないのです。

レントゲン室を出るとき、私は決心していました。

歩けるところまで歩こう。

その日の夕暮れ、アパートの駐車場に車を置きながら、 私は不思議な光景を見ていました。

世の中がとても明るいのです。

スーパーへ来る買い物客が輝いてみえる。

走りまわる子供たちが輝いてみえる。

犬が、垂れはじめた稲穂が、雑草が、電柱が輝いてみえるのです。

アパートへ戻ってみた妻もまた、手をあわせたいほど尊くみえました」『いま、感性は力』(致知出版社)より


人は、死を意識し、覚悟を決めた時、世の中が輝いて見えるという。

いいも悪いも、全ての存在を肯定し、認めるからだ。

そして、いままで何でもなかった当たり前だったことが、この上なく愛(いと)おしく、幸せに感じる。


二度とない人生、この一瞬一瞬を大切に大切に生きてゆきたい。

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