鹿児島の人や歴史、文化を独自の視点で切り取っていくフリーペーパー「アンダーズ・ハイ」。

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アーカイブ【vol.10 juntoki side・ドロマイツ】

テーマ:ブログ
デザイン・グラフィック「juntoki」の友人を通じて出会った「ステファン・イァンク」。
彼の持つ飄々とした雰囲気、音楽を通じて多くの人と出会い、人生を楽しむ姿に、今回のテーマ「カルチャー」の1つ、外と中が交錯し育まれる文化を…誰かに繋げ、また繋がっていく、そしてその中から生まれてくるFUNを重ねております。彼の多国籍な活動は、きっと多くの場所で、カルチャーを生み出していくのだと思います。




【ドロマイツ/ステファン・イァンク】

ステファンコ・イァンク。父はルーマニア人で母が日本人。アコーディオン奏者の彼は「Dolomites」という名義で、まるでジプシーのように世界各国をライブしながら回っているらしい。初対面の僕達は彼が来るのを、多少の不安と緊張に顔をこわばらせ、待っていた。
約束の時間を過ぎた頃、カーリーヘアーで髭を生やした身長180cmはあるであろう大きな男が店内に入ってきた。
「いやー 指宿まで行って砂蒸し風呂入ったりしてたから遅くなっちゃったよー、ゴメンね。」
流暢な日本語と陽気な性格。
『憎めない奴』
僕達の顔は一気にほぐれた。
 一通り挨拶を済ますと、彼は話し出した。鹿児島に来る前は石垣島の辺りに行っていた事。インドネシアでの仕事やニューヨークでの演奏者生活。今は東京の下町に住んでいるという話。その中で彼はこう言った。
「大都会は、なんて言うか考え方が狭い人が多い気がする時があるんだよね。それに都会はやたらデジタルで冷たいし心が無い感じがする。ずっと住んでたら病気になっちゃうんじゃないかと思うよ。やっぱり自然があってそれと共に生きるのが大切なんだよね。」
そう言って8月に東京からサンフランシスコに引っ越す事を話し始めた。
「サンフランシスコっていっても郊外の田舎の方だよ。東京には少し長く居過ぎたなぁ。でもね、日本は色んな所に行けて楽しかった。色々回って思ったんだけど、日本って凄く近い距離でも文化の違いがあって面白いよね。特に言葉遣い。隣同士の町でも少しずつ違ったりする。アメリカなんて東と西、北と南くらいの大まかな違いしかないからね。」
そんな旅先での話しをしながらその日は別れた。

 
 次の日、彼はあるイベントで演奏していた。彼の曲には世界各国、色々な音楽の要素や魂が混ざっていて、まるでその場に居ながら世界中を旅している気分にさせてくれる。それにしても、彼はアウェイではなくホームにいるような感じでライブをしている。
不思議だ。
そういえば昨日こんな事を言っていたのを思い出した。
「Dolomitesのメンバーは沢山いるんだよ。50人位かな。ニューヨークのDolomites、東京のDolomites、オレゴンにも仙台にもいる。やっぱり色んな所に自分のベースみたいなものは必要だからね。それを作ることが僕にとっては大切なんだよ。」
その話の中で、彼は自分の出生について語った。
「母が妊娠中に父と船で移動していて、その時、僕は産まれたんだ。船の上でね。それでたまたま近くだったイギリスで出生届を出したからイギリス国籍を持っているんだよ。でもイギリスで過ごした時間ってほとんど無いんだけどね。」
彼の音楽を聴きながら、昨日の会話が頭の中で回る。そして1つの疑問が浮かんできた。


『彼にとっての故郷はどこなんだろう?』


 2Daysのイベントが終わり、皆既日食を見るために、彼を含む11人で種子島へ向かった。高速船の往復チケットと軽ワゴン1台、泊まる所すら手配していない。
 僕達は強い海風と小雨の中、浜辺の公園で野宿する羽目になった。もちろんテントは持って来ていない。そんな中でも彼は不便や不満を口にする事は無く、陽気だった。単に旅慣れているというのでなく、〔その場の状況を皆で楽しめるだけ楽しもう!〕そんな想いの現われだろうと思った。
 彼はこの日の為にグラッパ(イタリアの酒)を用意してくれていて、それを皆に振舞う。たまたま声を掛けてきた地元のおじさんもこの輪に加わり、賑やかな酒宴となった。彼とおじさんが話しているのを眺めながら、何となく昨日抱いた疑問の答えが分かりかけてきたように思えた。
 日付が変わり数時間経った頃、寝る前に海を見て来よう。という事になり、皆で砂浜へ向かった。浜は強風で舞い上がった砂が体をバチバチと叩き、堪らず僕達は引き返そうとした。しかし彼は近くにあった防波ブロックに歩み寄り、 「僕はココで寝るよ。海が近くて波の音がいい。ここなら風も来ないからね。」
そう言って僕等が止めるのも聞かず、1人そこで眠り始めた。


 翌日の天気は生憎の曇り空ながらも、皆既日食の瞬間はやはり神秘的だった。
色々とトラブルがありつつも、無事帰り着く事ができた。僕達は高速船のターミナルで、それぞれ別れの挨拶をした。彼に、また来るように言うと、「何年後になるか分からないけどね。また絶対にくるよ。」
そう言って握手を交わす。明日は福岡に行くらしい。僕達の短い旅は終わったけれど、彼の旅はまだ終わらないようだ。


 僕は帰り道、車を運転しながら、ステファンコ・イァンクという男と出会い過ごした数日間の出来事を思い返していた。店での話やライブの事、日食の旅。まるで陽気な風の毒気に当たったとでも言うような不思議な感覚の日々だった。今はまだ、その陽気な余韻に浸っているような気がする。そんな事を思っていると、あの疑問、『彼にとっての故郷はどこなんだろう?』この答えが出てきた。
 それは、きっと彼にとっての故郷はどこでもなくて、旅する事こそが故郷に居るようなものなのだろう。そこがどんな場所であろうと、人がいて熱があれば、そこはたちまち彼の故郷の様なものになるのかもしれない。その場所にいる以上、そこを思いっきり楽しむというスタンスと、どこまでも陽気で気遣いができ、人が好きな彼だからこそできる事。彼が動けば故郷も移る。ステファン、君は何とも不思議な男だよ。
 日本で、日食が見れるのは26年後。今度はきっと晴れるよ。

アコーディオンと日食メガネ、それとグラッパを持ってまた来いよな。

次こそは太陽か隠れるところ、見てやろうぜ。

text by kentaro.

●Dolomites:(ドロマイツ)
STEFANKO IANCU(ステファンコ イァンク)を中心に東京を拠点に活動するバンド。
ルーマニア人の父と日本人の母の間にイギリスで生まれ、幼少時代を世界各国で過ごす。
ジプシー音楽を始めとする世界中の民族音楽から多彩な影響を受け、アコーディオンを操り、独自のスタイルを確立する。
2003~2005年、ニューヨークで3年間アコーディオン奏者として活躍。バルカンビートボックス(ジプシーエレクトロ)、イェルバブエナ(ラテンヒップホップ)、ゴーゴルボーデロ(ジプシーパンク)など多数のバントと共演。またヨーロッパ、アメリカ、インドネシア、ルーマニアなど、100回を超える様々なフェスティバルに出演。

オフィシャルサイト http://www.dolomitesmuzik.com/
マイスペースサイト http://www.myspace.com/thedolomitesoriginal

コメント

  1. キャンディと出会い
    2009/12/28 16:42
    ブログを読ませていただきありがとうございます。
    来年も良い年になりますように。

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